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映画を見ていて、前の場面がすうっと薄くなりながら、次の場面がじわっと重なって現れる――そんな切り替わりに気づいたことはありませんか。あの場面転換は「ディゾルブ」と呼ばれる技法です。
映画の感想を書くときに、「場面がふわっと切り替わって…」と書くより、「ディゾルブで時間の経過が表されていて…」と書けると、ぐっと伝わりやすくなりますよね。
この記事では、コトバンクに収録されている辞書の説明をもとに、ディゾルブの意味と、あわせて覚えておきたいフェード・ワイプを、場面転換の3つの技法として整理しました。それぞれの見分け方や、映画を見るときの注目ポイントもご紹介します。
映画のディゾルブとは?
前の画面に次の画面を重ねる技法
コトバンクに収録されているデジタル大辞泉では、「オーバーラップ」の項目で、映像編集技術の一つとして「映画やテレビなどで、一つの画面を消しながら、重ねて次の画面を写しだす技法」と説明されています。同じ項目には、「二重写し。ディゾルブ。クロスディゾルブ」とも書かれています。
つまり、日本語では「オーバーラップ」、英語では「ディゾルブ(dissolve)」と呼ばれることが多い技法です。英語の dissolve には「溶ける」という意味があり、前の場面が溶けるように消えていく様子をイメージすると覚えやすいですね。
「溶暗」と「溶明」が重なる
コトバンクに収録されている世界大百科事典では、オーバーラップは映画技術用語として「最初の画面を溶暗にし,重ねて次の画面を溶明にする方法」と説明されています。英語ではディゾルブのほか、「ラップ・ディゾルブ」「ミックス」などともいうそうです。
溶暗は画面がだんだん暗くなっていくこと、溶明は画面がだんだん明るくなっていくことです。前の場面が消えていくのと同時に、次の場面が浮かび上がってくる、というイメージですね。
ディゾルブは何を表す?
コトバンクに収録されている百科事典の説明では、オーバーラップは「場面の転換や時間の経過を表し」、〈ディゾルブ〉または〈ダブる〉ともいう、と紹介されています。
また、日本国語大辞典では、映画の技法としてのオーバーラップは「おもに、回想・幻想の場面などに用いられる」と説明されています。過去を思い出す場面や、夢のような場面への切り替わりで使われることがある、ということですね。
場面転換の3つの技法
ここからは、ディゾルブとあわせて覚えておきたい場面転換の技法を、3つに分けてご紹介します。
1. フェード(フェードイン・フェードアウト)
デジタル大辞泉では、フェードは「映画・演劇・テレビなどの、明暗による場面転換の手法」と説明されています。暗い場面が少しずつ明るくなる「フェードイン」と、明るい場面が少しずつ暗くなる「フェードアウト」の2種類があるそうです。
たとえば、ある場面がだんだん暗くなって真っ暗になり、そのあと次の場面がだんだん明るくなって始まる、という切り替わりがフェードです。いったん画面が暗くなるので、場面と場面の間に「区切り」を感じやすい技法です。
2. ディゾルブ(オーバーラップ)
先ほどご紹介したとおり、ディゾルブは前の画面を消しながら、重ねて次の画面を写しだす技法です。世界大百科事典の説明のように、フェードアウトする画面に、次の画面がフェードインして重なるのが特徴です。
フェードとの違いは、画面が真っ暗にならずに、2つの場面が一瞬重なって見えることです。重なっている間は、前の場面と次の場面が同時に見えるので、2つの場面のつながりを感じさせる効果があります。
3. ワイプ
デジタル大辞泉では、ワイプは「映画・テレビで、一つの画面を片隅からふき取るように消していき、そのあとに次の画面を現していく場面転換の方法」と説明されています。日本国語大辞典では、英語の wipe には「布などで拭く」という意味があると書かれています。
たとえば、画面の左から右へ、拭き取るように次の場面が広がっていくような切り替わりがワイプです。なお、デジタル大辞泉では「画面上に別の場面を重ねること」も、ワイプの意味として挙げられています。テレビ番組で、画面の隅に小さく別の映像が映る表示を「ワイプ」と呼ぶことがありますが、こちらはこの「画面上に別の場面を重ねる」という意味に近い使い方です。
フェード・ディゾルブ・ワイプの見分け方
3つの技法の違いを、表にまとめました。
| 技法 | 画面の変わり方 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| フェード | 明暗で切り替わる(暗→明、明→暗) | いったん画面が暗くなる(または暗い画面から始まる) |
| ディゾルブ | 前の画面を消しながら次の画面を重ねる | 2つの場面が一瞬重なって見える |
| ワイプ | 片隅から拭き取るように次の画面が現れる | 画面の端から境目が動いていく |
見分けるコツは「画面が重なるかどうか」
フェードとディゾルブは、どちらもゆっくり切り替わるので、最初は区別しにくいかもしれません。見分けるときは、「途中で画面が真っ暗になるか」「2つの場面が重なって見えるか」に注目してみましょう。
真っ暗になってから次の場面が始まればフェード、前の場面が消えきる前に次の場面がうっすら見えていればディゾルブです。ワイプは、画面の中に境目が見えて、それが動いていくので、比較的見分けやすい技法です。
映画を見るときの注目ポイント
場面転換に注目しながら映画を見ると、こんなことに気づけるかもしれません。
- 時間が大きく飛ぶ場面で、ディゾルブが使われていないか
- 回想や夢の場面に入るときに、どんな切り替わり方をしているか
- 映画の始まりや終わりに、フェードイン・フェードアウトが使われていないか
- 同じ映画の中で、場面転換の技法が使い分けられていないか
一度意識してみると、ふだん何気なく見ていた場面の切り替わりにも、作り手の工夫が感じられるようになります。
古い映画と新しい映画、実写映画とアニメーション映画など、いろいろな作品で場面転換を見比べてみるのも楽しい見方です。同じディゾルブでも、ゆっくり時間をかけて重なるものもあれば、短く重なってすぐに次の場面へ移るものもあります。重なっている時間の長さにも注目してみると、その場面の雰囲気の違いが感じられるかもしれません。
映画の感想でディゾルブを使ってみよう
感想に書くときの例文
場面転換の技法の名前を知っていると、映画の感想を具体的に書けるようになります。たとえば、次のような書き方ができます。
- 「主人公の子ども時代から大人になった姿へ、ディゾルブで切り替わる場面が印象に残った」
- 「回想に入るときのディゾルブが、思い出がよみがえる感覚をうまく表していた」
- 「ラストのフェードアウトで、物語の余韻がゆっくりと残った」
技法の名前と、その場面で自分がどう感じたかをセットで書くと、読む人にも場面のイメージが伝わりやすくなります。技法の名前だけを並べるのではなく、「どの場面で」「どんな切り替わり方をして」「自分はどう感じたか」の3つを意識して書くと、まだその映画を見ていない人にも伝わる感想になりますよ。
「なぜこの技法なのか」を考えてみる
もう一歩進んで、「なぜこの場面ではカットでぱっと切り替えずに、ディゾルブを使ったのだろう?」と考えてみるのもおすすめです。辞書の説明にあるように、ディゾルブは時間の経過や回想・幻想の場面に用いられることがあります。その場面で作り手が何を伝えたかったのかを想像してみると、映画の見方がぐっと深まります。
ただし、技法の意図は作品ごとに違いますし、見る人によって受け取り方も変わります。「こう感じた」という自分の受け取り方として書くのがよいですね。
辞書で見る「オーバーラップ」と「ワイプ」の言葉
「オーバーラップ」には映像以外の意味もある
デジタル大辞泉の「オーバーラップ」の項目には、映像編集の技法のほかに、「二つ以上のものの姿が重なり合うこと」という意味や、サッカーで後方の選手がボールを持っている味方選手を追い越して、前線へ走り上がること、という意味も載っています。日常会話で「イメージがオーバーラップする」と言うのは、この「重なり合う」という意味ですね。
日本国語大辞典では、映画の技法としての「オーバーラップ」の初出の例として、『モダン用語辞典』(1930年)が挙げられています。
「ワイプ」の初出の例
日本国語大辞典の「ワイプ」の項目では、初出の実例として、幸田文の『あとみよそわか』(1948年)の「与吉さんおとよさんはワイプされ、文子一郎が浮きあがる」という一文が紹介されています。映画の技法の言葉が、文章の中でたとえとして使われているのが面白いですね。
家で映画を見るときの練習方法
配信や DVD などで映画を見るときは、場面が切り替わったところで少し巻き戻して、もう一度見てみるのもおすすめです。一度目は物語に集中して、二度目は場面転換だけに注目する、という見方をすると、フェード・ディゾルブ・ワイプの違いが見分けやすくなります。気づいたことを映画ノートにメモしておくと、感想を書くときにも役立ちますよ。
映画のディゾルブでよくある質問
ディゾルブとオーバーラップは同じ意味?
コトバンクに収録されている辞書では、オーバーラップの説明の中に「ディゾルブ」「クロスディゾルブ」という言葉が挙げられていて、映像の技法としては同じものを指す言葉として紹介されています。ただし、オーバーラップには「二つ以上のものの姿が重なり合うこと」など、映像の技法以外の意味もあります。
「ダブる」もディゾルブのこと?
コトバンクに収録されている百科事典の説明では、オーバーラップは〈ディゾルブ〉または〈ダブる〉ともいう、と紹介されています。
動画編集アプリの「クロスディゾルブ」も同じ?
動画編集アプリでは、場面の切り替え効果として「クロスディゾルブ」という名前が使われていることがあります。デジタル大辞泉のオーバーラップの説明にも「クロスディゾルブ」という言葉が挙げられていて、前の映像を消しながら次の映像を重ねる切り替え方を指しています。
テレビの「ワイプ」と映画の「ワイプ」は違うもの?
デジタル大辞泉では、ワイプの意味として、画面を片隅から拭き取るように消して次の画面を現す場面転換の方法と、画面上に別の場面を重ねることの両方が挙げられています。映画の場面転換としてのワイプは前者、テレビ番組で画面の隅に別の映像を映す表示は後者の意味に近いといえます。
ディゾルブを知ると映画がもっと楽しくなる
映画の場面転換について、もう一度まとめておきます。
- ディゾルブ(オーバーラップ)は、前の画面を消しながら、重ねて次の画面を写しだす技法
- 場面の転換や時間の経過、回想・幻想の場面などに用いられることがある
- フェードは明暗による場面転換で、フェードインとフェードアウトの2種類がある
- ワイプは、画面を片隅から拭き取るように消して、次の画面を現す方法
- 見分けるコツは「画面が暗くなるか」「2つの場面が重なるか」「境目が動くか」
次に映画を見るときは、場面が切り替わる瞬間に少しだけ注目してみてください。ディゾルブを見つけたら、その場面で何が表現されているのかを考えてみると、感想を書くのがもっと楽しくなりますよ。